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​京の都は今日も騒がしい。

​視点:葉室

京の都は今日も騒がしい。

……いや、この御所に限っては”より”騒がしいやもしれぬ。

 

これまでは二人がかりで取り仕切っていた神薙候補者の聴取及び面談だが、尊様が出立されて以降はこの身一つで全てを行わねばらなず——。

それに加え、公家のお偉い方を代わりに立てるのではなく代役に自分が選ばれたことを腹立たしく思う者も居るようで、ますます事が面倒になっているのだ。

とは言え、「それでは万羽、あとは頼みましたよ」と、清々しい笑みを向けたあのお方を思い浮かべれば恨み節など出ようもないのだが……。

「葉室様、少しお休みになりますか……?」

気遣うように声を掛けてきたのは、自身の生家から呼び寄せた下男だった。

「構わん、通せ」

「……承知いたしました」

若干怯えた様子の下男の背を見ながら、何度目かの溜息を吐いた。

(後にやって来た候補者がケモノ使いの術と言い猿を躍らせてみせたことには堪らず声を荒げることになるのだが、それはもうしばらく先のこと——)

 

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