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​『曙』

時期:3年前の春。 視点:イクルミサマ

生食を通じて視た道を追ってみれば、遡っていった終着点の風景へとたどり着いた。

 

「……ここ。ここに埋まってる」

一見すると何もない地べた。落ち葉に覆われた湿った土。それ以上のなにものでもない場所だが、自分にはこの下に生食が眠っているのが視えていた。

『流石だね、僕たちだけでは絶対見つけられなかったよ』

そう言ったのは……いつだったか、凄く昔からこの山に住んでるって言う子ども。名前は知らない。

人間ではなく霊と言われる存在だと言っていたが、自分にはさして違いが分からないから不思議なものだ。

「本当に、あなた様には視えていらっしゃるのですね」

不思議そうな、でも、どこか嬉しそうな顔をしている人は自分を迎えに来たとか言っていた……確か、くじょうみこと、と言うらしい。

「ああ、……そんなに深くはないと思う」

「分かりました。……とは言え、素手で掘り返すのは時間を要するでしょうから――」​そう言って懐から紙を取り出したその人は、何かを呟けば手にしていた紙を宙に放った。

「さて、式神たちよ。いいように使って悪いですが、手伝ってくださいね」

瞬く間に人の形を成したそれは、みことに従ってせっせと穴掘りをする。

「……あんたも、不思議な力を使うんだな」

「これは妖力——あなた様にも巡っている力を応用したもので、形代……この紙さえあれば容易なものですよ」

そう言って、柔く笑みを浮かべたみこともまた土掘りを手伝い始めたから、自分もそれに倣って両手を使ってみることにした。

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