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​『香車』

時期:-- 視点:--

――ズル、ズル、

 

何かが這うような音。

 

――ぽた、ぽた、

 

何かが滴る音。

 

 

「大事ございませんか!」

「こちらは問題ありません、それよりあれは……」

 

刀を構え見据えた先に佇んで居たのは――下半身が蛇のような形状をした、美しい女……のような、何か。

 

女は鼓膜を突き刺すような鋭い金切り後をあげ、床に届くほどの長い黒髪をうねらせたのだった。

​​『香車』-前編 終

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