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幕間

時期:2年前の晩秋。 視点:--

「桜、ちょっとこっちへ来て手伝ってちょうだい。」

「はあい母さん、少し待って。これを置いてくるから。」

 

養蚕を生業としているこの村は比較的富んでいるものの、それでも来る冬支度は念入りに行わねばならない。普段の仕事に加え、最近では実った穀物を収穫しては加工したり、男達は近くの山へ出ては仮を行ったりと忙しない。

 

そんな中、薄桃色の髪を束ねた少女は刈り終えた稲穂を抱え込み、天日干しの為にこさえた竿へと向かった。

 

少女は田畑の間、あぜ道を小走りで通り抜ける最中、ふと目に着いたぼろ小屋の前で足を止めた。それは村と森の境目にあって、いつだって木々の陰りに覆われている場所。誰も近づかないし、“気に留めないように”心掛けている場所だ。……しかし、少女にとってはそれが酷く苦痛であった。

 

「桜ちゃん、どうしたんだい!」

田んぼの中から見知った村人が声を掛けてきたのなら、少女ははっとしたように稲穂を抱え直して。その傷ついたかんばせに笑顔を浮かべれば、明るい声を返した。

「……ううん、なんでもないよ!」

笑顔の裏で一人居た堪れなくなった少女は、逃げるように駆けて行ったのだった。

 

 

            

 

「うう……。」

暗い、寒い、寂しい。お腹が空いた、寂しい。

申し訳程度に置かれていた蝋燭はつい先ほど燃え尽きてしまって、天井の隙間から細く差し込む光だけが地面を照らしていた。

 

「みんな……、どうして……。」

 

人間としてごく最低限の生活を送ることしか許されないような造りのこの部屋に、その少女はうなだれるようにして座り込んでいた。

 

昼も夜も殆ど分からず、定期的に与えられる簡素な食事は天井の出入口を開けて放り込まれる始末。足場は外されてしまっていて、つま先立ちをしたって自力で出ることは叶わなかった。

 

「桜……、」

薄っぺらい茣蓙がひかれただけの冷たい床に丸まって小さくなった少女は、眠るように意識を手放した。

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